2.『潰瘍性大腸炎・クローン病の食事療法』

副題?は『自分の体に合った食生活で難病をコントロール』となっています。著者はジェームズ・スカラ。日本での初版が2007年9月ですから、今から2年半ぐらい前に訳され発売された本です。クローン病の食事本としては割と新しいほうだと言えるでしょう。

私がこの本に出会ったのは、本屋での立ち読みでした。今までに見たことのない本だったので、手にとってパラパラとめくっていました。そして、衝撃的な見出し「炎症性の病気にかからない人たち」というのを見つけます。そこには、グリーンランド人とデンマーク人とを比較して、いかに前者の炎症性疾患が少ないかについて書かれていました。さらさらと立ち読みしたあと、「これはちゃんと買ってじっくりと読もう」と思ってすぐ買いました。

大きな構成としては…
最初に、「第1部.IBD(*1)の課題との出会い」ということで70ページほど。次に「第2部.炎症に対する食事管理:腸の病気を落ち着かせる」ということで70ページほど。次に「第3部.IBDのための応用栄養学とライフスタイル」ということで70ページほど。ほか、参考文献やあとがき…となっています。この分厚い本がまるまるほとんど食事に関して(しかもIBDに特化して)書かれています。
(筆者注*1...潰瘍性大腸炎クローン病をあわせて“炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease: IBD”と呼びます)


第1部は、IBDの簡単な解説からはじまって、いかに食事が重要であるかということが書かれています(実際には「日本語版への序文」で最初に書かれますが…)。そして、これまでの知見から、どういったものが食べると危険なのか、どういったものを食べればよいのかについて書かれます。

第2部には、私が衝撃を受けた「炎症性の病気にかからない人たち」という章からはじまり、グリーンランド人とデンマーク人の食事の違い(脂肪分の摂り方)を記しています。そこから、炎症に対する食事をどうするのがよいか?と続き、一人一人の食事プランをどう作っていくのかの指針を示しています。

第3部は、栄養学全般について、栄養素ごとにそれぞれIBDの場合どう応用していけばよいかということが書かれています。さらに、運動やライフスタイルについても少し。


この本がこれまでのIBD食事制限の解説書と異なっている点は、この本が非常に科学的に説明されているということだと思います。これまでの本には「なぜ食べるとよろしくないのか」についてあまり書かれていないことも多かった。しかし、この本ではいくつかの重要な点がはっきり説明されています。しかも、ここまで明確に参考文献(論文)が載せられているのも珍しい(海外の本だというのが理由の1つでしょう)。
もちろん、栄養学についての所見は常に覆る可能性が(そして多数の実例が)あります。あくまでも「07年当時、著者の知見の範囲内での最新情報」、という読み方が必要です。これまでの日本の書籍と異なることが書かれてる部分もあります。また、残念なことに、アメリカの食文化に対して書かれた本なので日本人にとって十分ではないところもあります。逆に日本人にとっては当たり前のこともあります。アメリカではどうやら日本ほどの食事制限をこれまでやってこなかったようなので…。

実際にこの本を買ってから、この本の内容を取り入れて再度食生活を考え直しました。それを続けて2年近くになります。そのスタート時点で既に自分の病状は悪くなかっただけに、目に見える進歩は出ていません…残念ながら。悪化してないのだから成功、…という見方はありますが、そう言えるほどの年月が経ったとも思えません。私が今思うのは、この本は少なくとも1度は目を通したほうがいいということと、これからも試行錯誤しながらこの食生活を続けるということでしょうか。特に、理系の人や“理由がちゃんと分からないとやる気が起きない人”(笑)には超オススメの本です。

潰瘍性大腸炎・クローン病の食事療法―自分の体に合った食生活で難病をコントロール

潰瘍性大腸炎・クローン病の食事療法―自分の体に合った食生活で難病をコントロール